ITやAIに関するちょっとしたメモ

AIやIoTをはじめITに関して記録しておきたいことをメモ的に書いていきます。

AWSとAzureの大きな違い。いつの間にか課金&請求されるAWS(Amazon Web Services)の「無料」枠の落とし穴と、アップグレードしない限り課金しないMicrosoft Azureの無料アカウントの比較

今や時代はクラウドです。最近は、個別のIT基盤もプライベートクラウドと称することがあるので、あえてパブリッククラウドという言い方をすることがありますが、クラウド(ここではパブリッククラウドにおけるIaaS/PaaSに特化します)は従量課金を特徴とし、アカウントを取得してクレジットカード番号などの請求先情報を登録すると、すぐに使い始めることができます。個別にサーバ、ストレージ、ネットワーク機器、バックアップなどの管理ソフトウェアを買ってセットアップしていた時代とは隔世の感があります。

特にIaaS/PaaSといわれる分野では、Amazon Web Servicesが世界のトップシェアを握っています。ただし、この分野は、最近、MicrosoftのAzureも成長して第2位につけています。

この記事では、業界1位のAWSと、2位のAzureの「無料枠」の考え方の違いについて、取り上げたいと思います。

f:id:ColdSnap:20200824185408p:plain
* 1.実際に触って学べるAWSの無料枠と充実したチュートリアル

クラウドは手軽に始められるので、各社ともお試し用に無料でサービスが利用できるアカウントプランが用意されています。例えば、業界最王手のAWSは、以下のような無料枠の制度を作って、積極的に利用を呼び掛けています。
f:id:ColdSnap:20200824165526p:plain

クラウドはすぐに使えるといっても、IaaS/PaaSを使いこなそうとすると、ITの基本知識とそのクラウドの基本知識が必要です。なので、無料枠で実際に触ってみて確認してもらうということと、無料利用枠を使うことでその製品に対するスキルを一人でも多くの人に身に着けてもらうようにすることはクラウドベンダーにとって重要です。そこでAWSでは、無料利用枠とともに、一人で触りながら学べるチュートリアルやハンズオンをたくさん無料で提供しています。中身は充実しており、とても役に立ちます。さすが、AWSです。
aws.amazon.com
aws.amazon.com

* 2.AWS無料枠の落とし穴

ただし、このAWSの「無料」には、落とし穴があります。それは、無料枠は、無料の範囲のサービスしか使えないようになっているのはないという点です。この枠を超えると、勝手に課金されてしまうのです。つまり、無料枠で勉強するために、あるいはお試しで無料枠を使うために新たに作ったアカウントであっても、有償のサービスも使えるし、無料枠として設定されている時間や容量を超えると、そのまま遠慮なく課金され、請求され、開始時に登録したクレジットカードから料金が引き落されてしまうのです!

実際、ネットで検索すると、この無料枠の落とし穴にハマり、いつの間にか多額の金額を請求された、という経験を持つ方が何人もいます。私も、同じように苦い経験をしました。また、念のため、このような無料枠を超えた場合に無警告で課金される件について以前AWSのサポートに問い合わせを行いましたが、その時には以下のような返答をいただきました。

現在、無料利用枠を超過するリソースを操作していただけないといったことや自動停止、及びワーニングなどが表示されるようなご用意はございません。

お客様にはお手数おかけいたしますが、都度無料利用枠の範囲内に収まるか
ご確認の上、ご利用いただけますと幸いでございます。

AWS 無料利用枠
https://aws.amazon.com/jp/free/

なお、下記、無料利用枠の使用での料金発生を回避するためのドキュメントもご紹介いたしますのでお役立ていただけますと幸いでございます。

AWS 無料利用枠の使用時に料金が発生しないようにする方法を教えてください。
https://aws.amazon.com/jp/premiumsupport/knowledge-center/free-tier-charges/


AWSの「無料でお試しください」のページにも、実際はいろんな諸注意が掲載されているので、そのようなケースは了解済みであり、無料枠を使う人の自己責任だということでしょう。私の場合はそれほどの金額ではありませんが、世の中には数百万円の金額を請求されたというケースもあるようです。

では、もっと安心してクラウドで無料枠を使ってIoTなどの勉強をする手はないのでしょうか?残念ながら、AWSにこだわるなら今のところそのようなことはできないようです。しかし、AWSにこだわらなければそれは可能です。それは、勢いよくAWSを追い上げてシェアを伸ばしているMicrosoftのAzureを使うという手です。

* 3.Azureの無料アカウントは勝手に課金しない!

では、実際にAzureのWebサイトを見てみましょう。
f:id:ColdSnap:20200824174434p:plain
Azure の無料アカウントを今すぐ作成しましょう | Microsoft Azure

さらに、このページで一番重要なところをさらに拡大してみましょう。
f:id:ColdSnap:20200824174811p:plain

そうです!Azureは、無料枠の上限に達しても、その先、ユーザが知らないうちに課金して請求するなんてことはしないのです!単に、無料枠の限界に達したらそれ以上は使えなくなるだけ。しかも、親切なことに、こちらで設定しなくても、ちゃんと無料枠を使い切りました、という警告を出してくれるのです。

このAzureの無料アカウントの特徴については、つい最近、日経クロステックの以下の記事で取り上げられています。この記事は全部を読もうとすると有料登録が必要になりますが、無料で読める最初の部分だけでも骨子は十分わかると思います。
xtech.nikkei.com

ちなみに、最初の方でAWSチュートリアルなどの紹介をしましたが、Azureも以下のようなラーニング・パスを用意しています。
docs.microsoft.com


* 4.AWSとAzureは、無料枠でのユーザの自己責任の考え方が大きく異なる

このように、AWSとAzureは似たようなもの、無料枠についても大した違いはないだろうと思っている方は、無料枠の考え方については、AWSとAzureには大きな違いがある、ということは知っておいても損はないと思います。

つまり、無料枠について、AWSは、先ほど引用したサポートからの返答のように、「現在、無料利用枠を超過するリソースを操作していただけないといったことや自動停止、及びワーニングなどが表示されるようなご用意はございません。」「都度無料利用枠の範囲内に収まるかご確認の上、ご利用いただけますと幸いでございます。」というスタンスです。徹底した自己責任論の立場と言い換えても間違いとはいえないでしょう。

一方、Azureは、Webサイトで明確に、「Azure の無料アカウントで、これらすべてがあなたのものに。しかもアップグレードするまで課金されません。」と明記しています。ユーザが自主的にアップグレードしない限り、黙って勝手に課金したりしないのです。

念のために書いておくと、私はMicrosoftの回し者ではありません。AWSの「無料枠」につられて、結果的に痛い出費を迫られた経験を持つ、世の中にたくさんいる一人というだけです。もちろん、それはおまえの自己責任だろう、という主張は全くその通りだと思います。しかし、よく知らないからこれからこそ、無料アカウントを使って勉強しようとするわけです。そういう人に、本人がまだAWSについてよく知らなかったゆえに気づかず無料枠を超えてしまっても遠慮なくチャージするというAWSの方針は、その是非はともかく、少なくともAzureに比べるとちょっと厳しいんじゃないかな、とは思います。無料枠ということでいうなら、Azureのように、定められた無料枠の上限に達したら利用は止まる、使い切ったら警告が出る、明示的にアップグレードするまで課金はされない、という方が納得があります。

IT業界の巨人であり1975年というこの業界では今や老舗企業の一社であるMicorosoftは、IaaS/PaaSの分野ではAWSに比べて後発です。Windows以外のオペレーティングシステムを敵視していた時代もあったくらいです。しかし、サティア・ナデラがCEOに就任し、この会社は大きく変貌を遂げました。急速にクラウドのビジネスを立て直し、今や大変な勢いでクラウド事業を成長させています。その勢いは以下のグラフを見ればわかると思います。もちろんAWSは依然として圧倒的にシェアNo.1であり素晴らしいクラウドです。複数の会社が競い合うことで世の中の多くの会社やビジネスを支える基盤としてクラウドがさらに発展を遂げることを期待したいと思います。

f:id:ColdSnap:20200824173055p:plain
出展:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/13/news073.html