ITやAIに関するちょっとしたメモ

AIやIoTをはじめITに関して記録しておきたいことをメモ的に書いていきます。

【合格体験記・ITサービスマネージメント】ITIL 4 ファンデーション試験 ~ITIL V3から大きく変わった2019年リリースITIL® Foundation ITIL 4 Edition Foundationの勉強と試験~

2019年にリリースされたITサービスマネージメントの世界的な資格であるITILの最新版ITIL 4の基本試験であるFoundationに合格しました。ITILはV3までは日本国内でも有資格者がたくさんいらっしゃいますが、V4(以下ITIL 4)の合格体験記はこれを書いている時点ではまだ少ないようなので、今後、受験を目指す方の参考になればと思い、本日合格したばかりの一番熱い!状態のまま、合格体験記を書いておこうと思います。
ITIL V4 Information Technology Infrastructure Library

ITILとは?

この部分はご存じの方は読み飛ばしていただいてもかまいませんが、念のため、ITILとは何かについて最初に簡単に説明しておきます。これは「ITサービスマネージメント」(ITSM: IT Service Mnagement)と呼ばれる分野の世界的に有名な資格になります。ITというのはとても技術的な分野ですが、通常はITそのものが目的ではなく、それでショッピングサイトを作って運営したりとか、社内の場合だとそれで会計や勤怠のシステムを使ったりとか、ITを使って実現・運用している対象(サービス)が存在します。ITサービスマネージメントとは、そのようなITを使ったサービスを継続的に提供・管理していく活動のことを指しており、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)はその方法論を体系化したものです。法律ではないのでどうしてもこれに従わなければないというものではないのですが、ITというのは目に見える部分が少なく、それゆえに様々な苦労を強いられることが非常多い分野なので、このような方法論が体系化されました。もともとは1989年にイギリスで誕生しています。

ITIL 4はITIL V3と何が違う?どちらを狙った方がいい?

ITの世界は日進月歩です。このため、ITILも時代とともに進化し、変わってきています。21世紀の初頭にはV2が登場し、2007年には新しいV3と呼ばれる版が登場し継続的に整備が進められてきました。2011年にはV3の改良版である「ITIL 2011 edition」というのが体系化されています。そして2019年、新たなメジャーリリースとして「ITIL 4」が登場しました。

ITIL 4の特徴はいろいろなサイトで説明されていますので詳しくはそちらに譲りますが、個人的な解釈でごく簡単に説明すると、AgileとかDevOpsといった近年のITのトレンドを取り込みながら「サービス・バリューシステム(Service Value System)」という大きな概念を定義してそれを中心にITサービスマネージメントのあり方をITIL流に体系化し直したものといえます。

ITIL 4が誕生してもITIL V3の資格が無効になるわけでも失効するわけでもありません。少なくともこのBlogを書いている時点ではV3の試験も並行して行われています。10年以上の蓄積があり日本でも多くの有資格者がいるV3の情報は豊富です。よって、この辺は人によっていろんな意見があるようですが、個人的には、これからITILの資格をとるのであれば、やはり最新化されており近年のITのトレンドも反映されているITIL 4の方をお勧めします。

ちなみに、ITILは非常に広範囲な資格体系になっていますが、もっとも基本的かつ狙う方が多いのはFoundationの試験で、この記事も以降はそちらについて書いてあります。

ITIL 4 Foundationの勉強方法

結論から書くと、一般的な資格試験の勉強によくあるように、以下のような3ステップのやり方がお勧めです。この資格はトレーニングの受講が必須ではないので、独学でも受験は可能ではあるのですが、私のようにITSMにそれほど詳しいわけではない人は、素直に自分に合った何らかのトレーニングを受講してから試験に挑む方が効率が良いと思います。

・ステップ1.何らかのトレーニングコースを受講
・ステップ2ーA.想定問題集を繰り返しやる
・ステップ2-B. 想定問題集を繰り返してやる
・ステップ2ーC. あいまいなところや用語は、テキストやネットで確認しながら補強
・ステップ3.受験

多くの知られた資格試験と同じように、ITILも複数の業者さんがトレーニングコースを作って販売しています。現地に行って受講するというオフラインスタイルのものもありますが、オンラインのものもあります。後者についてはビデオ教材になっているものが主流のようです。値段もある程度の幅があります。資格試験のバウチャー(1回分)がセットになっているものも少なくありません。

ちなみに、ITILは資格試験の受験料がかなり高額(4万円前後!)なので、バウチャー付きのものもいい値段です。なんでこんなに高いの?と思うのですが、そもそも受験料が高くてその値段も入っていると考えると、トレーニングを提供している業者さんだけがボッているとは言い切れなさそうです。

オフラインとオンラインのものはそれぞれメリットとデメリットがあると思います。私の場合は、以下の理由でオンラインのビデオ教材を選びました。

(1)自腹で受けたので、少しでも安くしたい
(2)齢をとってきて途中で眠くなったりするので教室で受けるより、自分のペースで少しづつ進めたい
(3)齢をとってきて覚えが悪くなったので、ビデオで繰り返し見れる方がいい

選んだのは富士通さんが提供している以下のものです。これはお金もらって書いているわけではないので素直な感想を書きますが、結果として合格には役立ったので間違った選択ではなかったとは思いますし、1回ざっと見ただけに終わりましたけど、オフラインのトレーニングコースよりはかなりお安かったし、想定問題集はオンラインで繰り返し受けられたし、PDFのテキストも有益でした。学習時間の大半はこのオンラインの想定問題集とPDFのテキストで費やしました。ただ、講習部分は海外のビデオを吹き替えているだけのビデオですし、問い合わせをしても返事が来なかったり、これがおススメといえるかというとちょっと微妙です。
www.kcc.knowledgewing.com

私の場合、学習期間は10日で、学習時間は結局全部でで30時間以上かけたと思います。何しろ、自腹なので再受験は避けたくて、直前は結構必死でした。実は、過去にITIL V3 Foundationに合格した人から、楽勝と聞いたことがあるので、お金はかかるけど人気もあって簡単な試験なら時間のある時に取っておこうと思って取り組んだのですが、予想より辛かったです。ただ、それでも全体とてはITの資格としては難易度は高い方ではないとは思います。

ITIL 4 Foundation学習のポイント

実際にやってみて痛感したことは、「ITIL 4 Foundation」は暗記科目だと思わない方がいい、ということです。ITILが想定しているITのサービスマネージメントの在り方を理解することがまずは重要なポイントになります。すなわち、

(1)サービスバリュー・システム
(2)サービスバリュー・チェーン
(3)7つの従うべき価値
(4)4つの側面
(5)ITILラクティス

という大きく分けて5つの大枠をどう理解するかにかかっていると思います。この枠組みがわかってくるとそれほど苦痛ではなくなりますが、最初は大変でした。「何、これ!」という感じでした。

試験問題については守秘義務があるので書けませんが、上記の大枠の概念を正しく理解しておくということに加えてもうひとつ、紛らわしいあるいは混同しやすい概念については、違いを意識して理解しておくことが大切だと思いました。あくまでも例えばですが、インシデントとサービス要求の違いとか、インシデントと問題の違いとか、サービスデスクの役割とそうでないものとか、まあそういう、勉強していて紛らわしいなと思うところはあいまいなままにせず、何がどう違うのかマメに押さえていくことがポイントになるかなと思いました。

実際のITILの試験の概要

ITILのFoundationは学習内容としては予想より難解でしたが、試験自体は問題数も合格水準の低めで、以下のようになっています。ちなみに、私は全問正解を狙いましたが、結果は理想には程遠く正答率75%での合格でした。

(1)問題数:40問
(2)合格ライン:65%(40問中26問正解で合格)
(3)試験時間:60分

ITの試験によくあるように、PCで受験します。試験専門業者が用意している場所に行ってPCで受験するという業者もあるようですが、私の場合は自宅で受験しました。(初体験)当然ですが、手の届くようなところに本とかあってはダメ。事前にパソコンのカメラでぐるっと周囲を映して試験官に見せます。そして、パソコンのカメラで、試験中はずっと監視されています。ちなみに、試験官は外人。英語ですが、簡単な英語で、まあ何言ってるかはわかります。かわいい女性の声で、どんな人か見たいと思いましたが、こちらからは相手は見えず、残念でした。受験が終了したら瞬時に採点が完了して結果が表示され、「Conguratuation!」と声をかけてもらいました。

最後に

2019年9月24日の日経クロステックの記事では、「ITIL系」というまとめた書き方になっていますが、「IT資格実態調査」保有資格者数の5位にランキングされています。ITILはその中でも代表的な資格で、日本だけでなく世界に通用します。また、ITILは一部のベンダー資格のように数年で失効するというものではありません。特に、その中でもVersion 4にあたる「ITIL 4」は2019年にリリースされた新しい版で、今後はITILの中心的な資格になっていくと考えられます。IT関連の資格の中ではまだとりやすい方で、技術にそれほど詳しくなくても努力次第で手が届く資格でもありますので、関心のある方は、これを機会に挑戦を検討されてはいかがでしょうか。
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